1章

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大学に入って二回目の桜が散り、空気の色が見るからに変わり、輝きを放っても、僕は何も変わっていない。本当は変わりたい。成長とともにどこかへ失ってしまった自信を取り戻したい。ただ、長年の習慣によって凝り固まった思考からが、僕を縛り付けている。  そんなだから、僕は恋愛とは一生無縁だと思っていた。皆が経験しているありふれた特別は、僕には来ないんだと思っていた。だから僕は今、とてつもなく困惑している。まさか、文学部高嶺の花と名高い皇夢(すめらぎ・ゆめ)に告白されている。葉桜が萌え、陽光溢れるキャンパスの中で、僕はアイドルの卵といっても通りそうな美貌の皇さんに詰め寄られている。長いまつ毛に縁どられた目が必死に僕を見上げてきて、小さな口をとがらせる。ツヤツヤの黒髪が反射する光の輪に目を奪われながら、初夏の陽光の中で霞んでいる細くて小さい皇さんの輪郭を手で押さえていた。 「で、佐伯君。返事はどうなの?」 「え、あの、えっと・・・。返事と言われましても・・・。」 「えー、だからー。夢、佐伯君のこと好きなんだけど、付き合ってくれますか?って話よ。」 「え、え、え、だ、だからなんで!!??」 「えーもう。女の子にそういうこと普通聞く?好きだから付き合いたい。それだけ。理由なんていらないでしょ?私の気持ちはもう言ったよ。巧君は?私のことどう思ってるの?付き合ってくれるの?」  どうしよう。あまりの展開に思考が追い付かない。正直、皇さんとはもとから結構仲良くしていたし、そのことで他の男子たちからやっかみというか、羨ましがられてるのも、知ってた。でも、皇さんとは本当に本の話をしたり、レポートを助け合ったりする友達としてしか見てなかったし、向こうも僕のこと、そういう風にしか見てないだろう、と思ってた。もちろん、告白は嬉しくないわけじゃない。ないけど・・・。まさか、僕の人生にこんなことが起こるなんて。あまりにも突然過ぎて、いざこういう状況になると、どうすればいいのか全く分からない。
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