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鏡の中の自分に
上田 リコはとてもおとなしめな公立中学の3年生。
容姿も普通で、校則を破らない程度の黒髪のストレートのボブ。当然髪は普通の飾りのないピンでとめている。
身長も体重もごく標準。155cm43kg。目鼻立ちも10人並みで特に美人でもないが目立って悪い顔立ちでもない。
学校には普通に友達もいて、お昼はいつも同じグループで食べている。グループの中では当然一番おとなしいし、一番しゃべらないが、小学校の時からの同級生なのでリコの事もよくわかってくれている。
リコは学業では結構学年の上位に食い込んでいるが、あまりみんなそれにも気づかない。
一応通学している公立は、公立にしては強い陸上部に所属して、地区大会を勝ち進んでいる一人でもある。
でも、直接接している友達や部活の仲間以外はそれには気付かない。
リコもそれでよいと思っていた。
でも、進路を決める中学3年生。
高校に推薦で行くには何か推しがないと難しいだろう。
別に勉強でも進学する自信はあったけど、できれば部活もぎりぎりまでやっていたいし、試験は緊張するし、できれば推薦で高校に行きたい。
3者面談も近いある日、その日来る予定の母親に切り出そうとしても上手く伝えられなかった。
両親は別に推薦でも受験でもリコの好きな方を選べばよいと思っているので、特に口出しをしてこない。
リコの考えだけがリコの心の中で空回りしていたのだ。
リコは3者面談の朝、部屋の姿見に向かっておでこをつけて話しかけた。
「ねぇ、どうしたら上手く伝えられるんだろう。」
すると、鏡の中のリコが急に顔をあげてリコに話し始めた。
「私が一日変わってあげようか。」
リコは驚いて鏡の中のリコを見た。
「その間私はどうすればいいの?」
「もちろん、私と入れ替わって鏡にいてもらわなきゃ。」
「ちょっと、怖いけど。どうすれば?」
「あなたの右手を鏡に合わせて・・・そうそう、それで、私の左手を鏡に合わせて」
と、鏡の中が言うと、鏡の中のリコに本物のリコの右手がギュッと掴まれた。
そのままダンスでもするように軽く引っ張られると『クルン』と反転して鏡の中のリコと本物のリコが入れ替わった。
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