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ギャルと震度20
あちらこちらから黒煙が上がり、様々な建物が倒壊した光景が眼前に果てしなく広がっている。最長最強を謳った半分に折れた電波塔を見詰め、
「な、何なんだよ一体…… 」
ボソリと呟きながら、タイガーは左手に持ったスマホを力強く握りしめた。その画面には、
【A. 大地震による富士山の火山活動】
【B. 某国からの核弾道ミサイル着弾】
【C. まだ君達はゲームの世界の中にいる】
三つの選択肢が表示されており、
「ふざけるな! 」
怒声が引き鉄にでもなったかのように、ノイズを走らせ選択肢は消えた。
呆然としていた者達の中から、少しずつ考察の声が上がり始める。
「核爆弾じゃないのか? 」
「それなら残留放射線で俺達生きてられないんじゃ…… 」
「投下位置や、投下時間次第だとあり得るんじゃ? 」
「いやいや、地震だろ」
「日本は様々な地震対策をしてきたんだぞ、ここまで広範囲を一気に焼き尽くす地震なんて考えられない」
「違う!まだ、ゲームはきっと続いてるんだ! 」
「やっと……やっと帰れると思ってたのに…… 」
帰ってどうする?俺達は家族を亡くした者や、家族に見捨てられている者達の集まりじゃないか。帰ったところで……
マイナスイメージに押し潰されそうになるタイガーの右肩が、ポンと一つ叩かれる。その方向に目をやると、最初から最後までずっと一緒にいてくれた仲間、廃墟ですら男前を際立たせているドラゴンの姿。
「さっきの選択肢は、全部が本当かもしれないし、全部が嘘かもしれない。答えの無い選択肢、だから選択される前に消えた。そして、俺達は今、こうして生きている」
クールさが増した表情でクールな言葉を並べるが、ドラゴンの目は廃墟ではなく、タイガーを見つめる目はとてつもなく優しく、右肩に置かれたままの左手はとても温かかった。
様々な感情の騒めきが辺りを埋め尽くす中、
「 これは…… 」
静かに口を開いたのは、
「何か分かったの?作太郎さん」
プレイヤー名で呼び合うこの【CHOICE】というゲームの中、唯一皆が本名を知っている森山作太郎。その口が重く語り出す。
「十年前、儂が議員になるのを志した頃じゃ。世話になった地方議員からある噂話を聞いたんじゃ」
「……噂話って? 」
初老で丸々と太ったお腹の一番信用していると言ってもよい男は、被っていたハットを目深に被り直し、
「その時は、極秘議題として上がっている話だと聴きながらも、二人で笑い飛ばしとったんじゃが…… 」
中々に言い淀む。
「とっとんじゃが、何? 」
タイガーは先を促し、作太郎は一つ唾を大きく飲み込みそれに応える。
「震度20、それが近々日本で起こる」
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