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「待て、勝手に決めるな! 何なんだお前っ! 気味が悪い!」
異常犯罪者として知られるシリアルキラーさえ気圧されていた。口を大きく開けてわめき、腕を振り払おうとする。
だがマイケルは決してくじけなかった。
「写真家だと言っているじゃないか。ああ、嘘じゃない! 腕には自信がある。何せ市長の2番目のお嬢さんの見合い写真を撮ったくらいだ」
「そんな話、してねえ……」
ついに、ジョーの語気がすこし弱まった。
「次の選挙の時には、父親の方の肖像写真も撮るだろう」
マイケルは得意げに言い、ようやく手の力をゆるめると、いかにも汚らわしい物を落とすように両手を払った。
「次期もゴードン氏か、あるいはメイヤー氏になるかは、私の知った話じゃないが」
「くそっ。なよっちいくせに、なんて力してやがる……」
ジョーは解放された腕の具合を確かめ、痛みにしかめた顔で睨みつける。ナイフのように鋭く光る眼と牙は手負いの獣そのものだが、細身な相手を前に、背を向けて逃走するという選択肢は持っていないらしい。
そんなジョーを、マイケルはすっかり手中に収めたように冷静に、それでいて尊大にふるまった。
「私の家はサード・ストリートにある。この橋を渡ってすぐだ」
それから石畳に転がった夫人の遺体を指差すと、当然であると言うように、あっさりとした調子で続けた。
「君の“荷物”だ。忘れずに」
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