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一年前、我が家の隣で一家惨殺事件が起きた。
夜間、寝静まった利府家に一階の掃き出し窓のガラスを割って侵入して、鉈で四人を次々に殺して回ったんだって。『騒音』に耐えかねた、すぐ近くで一人暮らししてたおじいさんが。
直前に妻が亡くなって、子どもたちはとうに家を出ていて大きな家にひとり残されていた彼は七十代前半だった。
結婚して遠くに住んでる娘さんが、「心配だから一緒に暮らそう」ってお葬式で来たときに誘ってた、って後で知ったわ。
おじいさんが「ここはお母さんと暮らした家だから。お母さんが寂しがるからお前のところには行けない。すまない」って断ってたことも。
──生前のおばあさんが、最期の入院の間際まで利府一家の『演奏』に悩まされていたことも。年配の人は床につくのが早いから、眠れなくて相当辛かったみたい。
おじいさんの、娘さんに向けたっていう「すまない」には、きっと別の意味も含まれてたんじゃないかな。
娘やその家族のこともちゃんとわかってて、それでも思い留まれなかった。
長いこと連れ添った大事な人を苦しめた、……もしかしたら死期を早めたかもしれないやつらを許せなかった?
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