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 やっと得た静かで穏やかな環境で、私は勉強に没頭する生活を送っていた。  更地になった元利府家の、哀れなほど小さな空間を横目に見ながらの自宅通学。  大学入試は単なるハードルの一つで通過点でしかない。入学してからが真の始まりなのよ。  だから私のみならず近隣の皆がこの静寂を手に入れるために、にしてしまったあのおじいさんには申し訳ない感情が今も拭えないでいる。  彼の心は今、少しでも凪いでいるんだろうか。  死んだ利府家の四人には、「自業自得でいい気味だ」としか感じない。  平和って、現実には誰にでも当然に与えられるものじゃなかった。  突き付けられたその事実を、日々の貴重な静けさの中で私はしみじみと噛み締めている。                              ~END~
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