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 隣に住む利府(りふ)って家族は、自称音楽一家、ってやつだ。  音大を出たのが唯一の自慢らしいピアノを弾く母親、専門じゃないけどヴァイオリンを鳴らす父親。  息子二人にも小さい頃からその二つをやらせてた、というか正確にはやらせたかったけど中途半端に終わったみたいね。結局、どちらも音大には進んでいない。ごく普通の私立大文系学部に通ってるそうよ。  それに対する感想は、特になにもない。「ああ、そうなんですね」ってだけ。中堅大学でも本人の実力と志望に合ってるなら、他人が口出すことじゃないもの。バカにする気なんて一切ないし、正直しようと思うほどの興味もないのよ。 「クラシックはお金がかかるから。お金がないとできないから」  それが利府家の母親の口癖だったんだって。自分の家が裕福だったという自慢なんでしょ。  これは以前、近所のおばさまが話してたのを耳にしたの。「音楽って大変らしいですね」って感じの話題で。  自慢話を聞かされてる人たちの方が間違いなく経済的な余裕があるのに、にこにこ黙って相手してもらって悦に入ってたの?  皆さん決して指摘なんてしないから気づかなかったのかしら。  最近はあの母親も一切口にしないものね。
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