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「音楽や、……芸術が悪いとは全然思わないわ。人生の彩りとしては素敵よね。ママも小さい頃ピアノは習ってて、後悔はしてないし」
多分私に告げるつもりはなかったはずの、ママがほろりと零した本音。
「──ただ利府夫人のような人とは関わってほしくないから、帆南ちゃんにはわざと普通のお稽古事向けの教室を選んだの。本格的に考えてる人が絶対来ないような」
私は小学生の時、あくまでも教養や嗜み程度でピアノを習ってはいた。中学受験の塾に行くようになったら、そちらのほうが楽しくなって結局ピアノは三年でやめちゃったわ。
ピアノ教師って、生徒には偉そうに命令しかしちゃいけないってルールでもあるの?
最初から趣味で、ここまであからさまには言わなくても「ただの手慰みでしかない」ってママが伝えてるのに。「本気でやりなさい! あなたならもっと上に行ける!」って、私はそんなこと求めてないって理解できないんだね。
まああれでも「ピアノ教師」の中ではマシな部類だとしたら、ママの心遣いには本当に感謝してるよ。
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