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「帆南ちゃん、あの大学目指してるんでしょ? 女の子は理系でそんなにお勉強頑張るより、もうちょっと、ねぇ」
高校に行こうと家を出たところで顔を合わせた利府家の母親が、嫌みっぽく声を掛けて来た。
「母のようになりたいので。社会の役に立つ、自分の力で生きて行ける人間になりたいんです。それは男女関係ないと思ってますし、親に『女の子だから』なんて一度も言われたことありません」
別に愛想笑いで済ませても良かったし、実際普段はそうしてた。実質無視と同じ。
だけど結局、相手を増長させただけだったんだよね。だからもう、ここで黙らせてやろうと思ったんだ。
「そ、れは、あたしは働いてもない主婦だけど。なんの役にも立ってないわけじゃないし──」
私はあんたのことなんか言ってないよ。思ってはいても。
「お前みたいな、他人に迷惑掛ける以外に能のないタダの主婦にだけはなりたくないのよ」
口にも表情にも出さない、私の意思ですらない妄想。
そんなものを勝手に読み取った気になって憤慨してるのは、役立たずの穀潰しだって自覚があるから?
このオバサンが、ごく普通の主婦なら何も感じない。というか、主婦ってだけならたくさんいるでしょ。このあたりだけでも。
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