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「──わねぇ。あんな大変な事が起こるなんて……」 「まったくですよね。まさかここで、あ、あら帆南ちゃん。今帰り?」 「そうです。こんにちは」  道端でお喋りしてたおばさまたちの横を通る際に、つい耳が拾ったそんな会話の切れ端。  今しがた聞こえたパトカーのサイレンのせいじゃないかな。思い出すわよね、嫌でもね。  深刻そうな台詞に反して、彼女たちの口調や表情に湿っぽさは窺えなかった。  たとえ可哀想だと、お気の毒だと口にしても、その言葉はおそらく『被害者』に向かうことはない。表面的にはともかく。  敢えていうなら「事件の起こった街」になってしまった、って気持ちの方が強いんじゃない? 
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