★03. 感応寺くんは、気づいてしまった。

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★03. 感応寺くんは、気づいてしまった。

「みなさんは、なんのために働いているんですか」  最終面接。役員のおっさんたちを前にしたあまりに素朴な若者の質問に場がしんと静まりかえった。……沈黙を破ったのは、ひとりの役員の笑顔だった。 「わたしがそれを答えるのは簡単だが。……きみは、うちの会社に入ってそれを見つけるんだ」  ああ言ったおっさん、いまなにしてんだろ。宗方(むなかた)、とか言ったかな。日に焼けた顔が印象的なイケオジだった。  就活は散々で。見栄をはって大手を受けまくって落ちまくった。勝ち組が勝ちを重ね、負け犬たちが負け続ける残酷な世界。……のなかで。  システムアイは、おれを拾ってくれた恩人だった。グループディスカッションで、あまり表に出ないおれを、現場のSEが、「感応寺さんのような俯瞰した立場で物事を進められるひとが現場に欲しいです」と絶賛してくれた。……就活に行き詰まっていたおれにとってはまさに救いとなった。
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