感応寺くんにいじめられたい☆【完結】

★01. 感応寺くんは、いじめたくない。

　だいたいなんなんだこの女。向谷(むかいだに)って女。

　……内定式の前にメールが来た。人事から聞いたとか。んで翌年四月に入社する同期全員で親睦を深めるべく……要は飲み会します、って連絡。

『よかったら同じ会社に入る仲間同士、みんなで楽しく交流を――』

　――『仲間』。善人度満載の文面に吐き気がした。クソ面倒くせえ。だいたいおれは有名な海賊漫画は読みもしないし二十年経っても目的地に着かず仲良しこよししてるのが気持ち悪い。

　勿論おれはそんなメールには返信せず、無事、入社の日を迎えた。……社会人になんかなりたくなかった。好きなことを好きにやれる学生でいたい。しかし、この世はおれにそんな自由さえも許さない。

　ジジババどもが長生きし、やつらの保険料医療費をおれたちが稼がねばならない……のは癪だ。どうせおれたちが本来年金を貰う年齢になっても公的年金は貰えない。夢を見ることの許されない、馬鹿馬鹿しいこの世界。真面目に働く者が馬鹿を見る。

　……なのに。向谷は呑気な顔をして話しかけてきた。しかもだ。おれが冷たく突き放したというのにあいつ……。