★01. 感応寺くんは、いじめたくない。

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 あのうっとりとした顔。なんなんだ。普通、引くだろ。  こじらせているのは自覚している。流石におれもそこまで痛いやつじゃない。……しかし。  同期と仲良しこよしつるむのは、なんか『違う』気がしていた。……社会の奴隷になるってことだぜ結局。絶望しかねえわ。  そして進んで奴隷のご身分を満喫する、こいつらが心底馬鹿に思えた。……働くのってどういうことかこいつら本気で分かってんのか? 学生みたいに。へらへらしやがって。胸糞わりい。  その日の帰りも、向谷はおれを見つけると目ざとく話しかけてきやがる。……ねえ感応寺くん……。 「うるせえ。おれに関わるな」  避けるようにして追い抜いたのだが。後ろから笑い声が聞こえておれはゾッとした。 「きゃはっ。……感応寺くんって本当……素敵★」  だから。関わるなおれに!!  周りの連中の視線が突き刺さるが無視しておれは研修ルームを飛び出し、エレベーターに飛び乗った。心臓はバックバクだった。  思わずひとりごちた。
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