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☆02. 感応寺くんに、いじられたい。
……珍しいなと、思った。
電車のなかで。スマホをいじらず。文庫本を読む男の子……そして彼は女性に席を譲った。なるほど、細い方だけどおそらくマタニティマークをつけていたのだろう。よくいるスマホ弄り倒す男の子みたいに自分の世界に入り込まずちゃんと、周りを見ている……。
取り立てて美青年というわけでもない。髪型も普通、けど、身長が高くて……身長180cmはあるかな……彼は同じ東京駅で降りた。混雑した京浜東北線は、品川に着くとぐっとひとが減る。そんななかで、彼の黒いスーツに包まれた肢体だけが浮かび上がって見えた。
のみならず。わたしの、斜め前の席に座った。入社式の後の研修で。既に内定式のときに何人かと友達にはなったけど。彼は……見覚えがなかった。
まぁ、同期が五十人いる会社だし。内定式で話すチャンスがなければ。覚えてないのも無理はない。
けれど。
感応寺涼……その名前と顔は、ちょっとやそっとじゃ忘れられそうになかった。
だって。
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