☆02. 感応寺くんに、いじられたい。

2/4
前へ
/130ページ
次へ
 研修が始まる前は、みんな、内定式、それからその後のわたしが幹事を務めた四十九人参加の飲み会で顔を合わせている。もはや友達感覚だ。特に、人事の許可を得て、内定者みんなに事前にEメールで、親睦会の案内を送ったわたしなんか大体みんなが知っている。  けれど。  感応寺くん……。わたしから送ったメールには返事をくれなかった。社会人としてそれはどうかと思うぞ感応寺くん?  なわけで先ずは先手必勝といこうか。わたしは、がやがやと研修ルームでみんなが学校の休み時間のノリで騒ぐ中を、感応寺くんの座る席の前へと回り込んだ。 「感応寺くん、……だよね。  向谷(むかいだに)って言います。仲のいい子には、はんちゃん、て呼ばれてる」  わたしはみんなの注目を集めるのを感じながら、ねえねえ、と、仏頂面で本を読み続ける感応寺くんに話しかける。……シカトかよ。 「感応寺くん、あいうえお順だと前の番号なのにこの席なんだね?」石像に話しかけているかのような、手応えのなさよ。「……内定式の後の飲み会、来なかったの、感応寺くんだけなんだ……だからあまり話せてないよね? ねえよかったら、帰りにみんなでお話とか――」 「うるせえ」
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

127人が本棚に入れています
本棚に追加