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「どけ、どけ。ここは禁足地ぞ。なにやっとる!」
仁朗さんが村人をかき分け血相を変えてやってきた。
「亀さん、あんたここが神多羅木家代々の禁足地と知っとろうが」
「したって見てみろ。訃儀の大岩の下にこげなもん。大津先生もいらっしゃる。村だけの大事にはしとけんぞ」
亀さんが穴を指さして仁朗さんに詰め寄った。温和だった亀さんの変わりように、私は驚き二人の間に入った。
「まあ、お二人とも。もう警察に一報を入れていますし、到着までここを荒らすのも良くありませんから。一旦村に戻って待ちませんか」
「好きにせー! お前らここが神多羅木家の土地いうこと忘れんな!」
仁朗は他の村人に睨みをきかせると踵をめぐらした。
「大津先生。警察が来るには時間がかかる。先生が見て、なにか分かるこたーないでしょうか?」
「ここからではー、おい大喜くん!」
亀さんに尋ねられるのと、大喜くんが脚立を下すのは、ほぼ同時だった。
「手を合わせるくらい、ええじゃろ」
脚立を降りた大喜くんは、しゃがみ込むと熱心に手を合わせていた。
「わしらは無理じゃて、代わりに先生も」
亀さんの言葉に村人たちも頷いたので、私も脚立を降りていった。白骨を見て欲しい口実なのはわかっていたので、手を合わせながら自分なりに観察をしていると気のせいか「見つけた」と聞こえた気がした。
解散して各々が家に帰ると、亀さんは私の部屋にやってきた。
「どうでしたかね先生」
どこかすがるような眼差しに、私は自分なりの考察を述べた。
「頭蓋骨と骨盤の形状から見て。あれは、どちらも女性だと思います」
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