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けれども、思い描いている理想の絶望には未だ出会えていない。そのために監禁し、殺害した女性はこれまでに六人。ニコールもそうだが、彼女たちはジョセフのきちんとした身なりと整った容姿、そして特権階級であることがわかる特別なアクセントにたちまち警戒心を解くのだ。それこそ失笑してしまうくらい、容易く。
対象の女性を選ぶ基準は、まず好みかどうか。次いで身体が柔軟であること、小柄であることの二点だ。理由は単純である。誰にも見られることなく、怪しまれずにここへ連れてくる方法として、ジョセフは例のスーツケースを使っていた。普段から使い慣れているそれは、何の違和感もなく罪深い共犯者になってくれている。
七人目となるニコールは、繁華街で出会ったアメリカ人観光客である。ロンドンへはウェストエンドのミュージカルを観に来たらしく、予定は未定の気楽な一人旅だと笑っていた。そんな他愛もない会話で殺意が芽生えたのは、彼女の趣味がヨガだと知ったからだ。
例によって彼女を誘うのは至極簡単だった。強い薬を盛って意識を奪い、丁寧に彼女を折り畳み、スーツケースにしまう。背中から臀部のラインがぴったりきれいに収まる様は、誰かに見てほしいほどの出来栄えだった。
彼女を持ち帰った際にミセス・ヨリックと出くわしたが、出張の帰りだと言えば何の問題もない。そういう時、ジョセフの胸中には決まってシニカルな可笑しさがこみ上げた。世の人々は自分の外見と話し方だけで騙される。信用に足る、きちんとした人物だと思い込むのだ。もはや条件反射のように。
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