最期の願い

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 孤独とは無縁の、にぎやかな日々。冬が訪れると、デイビッドは肺を患い、床に伏せるようになった。窓の向こうに見える灰色の空を眺めながら考えるのは、自らの余命のことである。ベッドに横たわったデイビッドがうつらうつらしていると、夢のなかに神様を名乗る老人が現れた。神様はにこにこしながら言った。 「ふむふむなるほど。私財を投じて教会を造るとは、なかなか信心深い人間のようじゃ。褒美におまえの願いを叶えてやろう。なにがいい?」  デイビッドは深々と頭を垂れて答えた。 「いくらでも動ける丈夫な体をください。誰にも頼らず、心穏やかに余生を送りたいのです」 「ふむ。誰にも頼らず心穏やかに、とな?」 「はい。ここにいると、毎日誰かがやってきてあれやこれやと私の世話を焼きます。しかしこのような体になる前は一人でなんでもできましたし、本当は孤独が好きなのです。もっと静かな場所に引っ越すのが理想です」 「なるほどな。しかし余命いくばくもないおまえの体を丈夫にしてやることは不可能じゃ。どんな命のともしびにも限りがあるものじゃからな。となれば、わしが手助けしてやれるのは、おまえを静かな場所へ移すこと。どれ、今すぐ叶えてやろう」
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