最期の願い

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 不思議なことが起こった。ありとあらゆるものがピカッと光ったかと思うと、そっくり消えてしまったのだ。浅い夢を見ているのだろうとまばたきを繰り返したデイビッドだったが、何度試しても結果は同じだった。どうやら見知らぬ草原に、ベッドごと移されてしまったようなのである。  これは大変なことになってしまった。デイビッドは咳き込みながら半身を起こし、姿の見えない神様に訴えた。 「神様、これはあんまりです。確かに私は静かな場所に行きたいと望みましたが、それは健康な体に戻ってこその願い。一日中ほぼ寝たきりの私には食料を調達することもできません。もう一度元の場所に戻していただけませんか?」 「デイビッドよ、その心配はいらぬ。ここはわしの庭。空腹を覚えることは一切ないのじゃ。朝には陽が昇り、夕方には日が沈む。暑くも寒くもない。そよぐ風以外、訪れる者は誰ひとりとして現れぬ。孤独を楽しむにこれ以上の空間はないぞ」 「さようでございましたか……」 「しかしデイビッド。わしは孤独がどれほどつらいものか知っておる。故に誰かひとり、ここへ呼び出すことを許そう。既に亡くなっている者に限るが、誰か思い当たる者はおらぬか?」
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