最期の願い

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最期の願い

 年老いたデイビッドの体はぼろぼろだった。  長いこと石工職人をしていて常に同じ姿勢だったのが災いしてか、首を横に傾けることができないし、手足の関節がうまく曲がらない。立ち上がれば膝と腰が痛むので、少し離れた場所にある物を取るにもひと苦労。目はかすむし、耳もよく聞こえない。かと言って座ってばかりいるのも良くないと自らを鼓舞して散歩に出かけるも、気づけば他人様の手を借りずに坂道を歩くことさえままならなくなってしまった。  もともと口うるさく偏屈な性格だったが、体が思うように動かなくなった分、余計に悪態をつくものだから、村人の誰もがデイビッドを疎んじていた。それでも毎日誰かしらがデイビッドのもとに食事を届け、身の回りの世話をするのは、彼が村の功労者だったから。デイビッドが若い頃に建てた石造りの教会は、時おり村を襲う水害からたくさんの村人たちの命を救っていたのである。
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