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運命の子
僕の人生は、
不安と期待に迎えられて始まった。
生まれたての僕は、いきなり複雑な表情をした両親に覗き込まれていた。顔が影で暗くなる。
「このシッポって…」
「そうか。本当にそうなのか」
父と母が順番に、ゆっくりと、僕のシッポをさわさわと撫でる。一瞬身構えたけど、僕は何も感じなかった。怖いくらいに何も感触がなかった。母は不安そうな顔をしていて、父は少し嬉しそうな顔をしていた。
「本当にあるのね。金のシッポ」
「いざ目の当たりにするとさすがに興奮してくるな。計算上はいつ生まれてもおかしくなかった。まさか自分たちがなんて思わなかったけどな」
医者が鬱陶しいくらいの勢いで部屋に飛び込んできた。どうやら興奮している。
「おめでとうございまーす!ま、まさか、運命の子が出るなんて!誠に勝手ながら、私も親のような気分になっております。なんてことだ。まさかまさかですね、本当に。あ、私の方で先ほど、運命の子が出たということは中央国議会の方に連絡しておきましたので」
「それはそれは、ありがとうございます」
父がとろけるような目つきで僕を見つめて、右手で頭を撫でる。左手でシッポを撫でる。
「お前は、運命の子だ」
「私、とっても不安だわ。この子がこんな大きな責任を負わなきゃいけないなんて。私にできること、何かないかしら」
「俺たちが信じてやらなくてどうするんだ。俺たちだけがこの子の親なんだ。大丈夫、絶対にうまくやるさ」
「そうね。私たちが信じてあげなきゃね。この子なら、きっと大丈夫よね」
"パーパラパーパラパラパラッパラ"
"シャンシャカシャンシャン"
激しいラッパの音と、騒がしい鈴の音が、外から聞こえてくる。その音はだんだんと部屋に近づいて来た。
「おめでとうございます。私は中央国議会の者です。お二人の息子さんは、めでたく、運命の子として命を授かったとのことで、お伺いしました。一応なんですが、シッポの方確認させていただきます」
長い髭の国議会の男が、やけに綺麗で冷たい手で金のシッポを触る。ニコニコしながら10秒ほどさすっていた。そして、はっきりと事実を告げた。
「正真正銘、金のシッポです!」
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