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顔合わせ
「えっと、キツネのキンです。よろしくお願いします。あ、10歳です」
目の前には、これから長い年月を共にするであろう仲間たちがずらりと並んでいる。よく分からない感情の読めない目をしているように見えた。そして今の僕が終わった時点で、全員の自己紹介が終わったことになる。ふっ、と軽く息を吐きながら、団長が前に出てきた。
「てことで、お前らはこれから"金の護衛団"として国を守っていくことになる。金の部分を見せびらかしてヘラヘラ生きてきた今までとは何もかも違うから、覚悟しておけよ。ちなみにやめるという選択肢は用意していない。もしそれでもやめたかったら自分の金の部分でももぎ取って、俺の前に持ってくるんだな」
「ひゃっ!」
僕の隣のウサギが自分の耳を触りながら悲鳴をあげた。名前は、なんだったっけ。見るからにか弱そうだ。こんなんでやっていけるのだろうか。
「どうせ今の自己紹介で完璧に覚えられたやつなんていないだろうから、一応護衛団のメンバーリストを作っておいた。間違いがあったら教えてくれ。おーい、コインコー」
コインコと呼ばれる小さなインコが、大きなメンバーリストを嘴でつまみながら登場した。
-------金の護衛団メンバーリスト-----------
○団員○ [名前:種・金部分]
・キリ:キリン・首 (12)
・カババ:カバ・口 (14)
・ゾモゾ:ゾウ・鼻 (10)
・ブラカラ:カラス・嘴 (14)
・タヌー:タヌキ・腹 (10)
・ニャゴ:ネコ・髭 (12)
・ウサ:ウサギ・耳 (11)
・キン:キツネ・尻尾 (10)
☆団長☆
・ドラ:トラ・爪 (16)
★副団長★
・サイト:サイ・角(15)
以上10名
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「この金の護衛団は、金付きがようやく同じ時代に10人揃ったということで結成されたので、皆で成長していくという意識で頑張っていきましょう」
副団長の、えーっと、サイトさんがピシッと場の空気を絞めた。名前、頑張って覚えないとなあ。隣のウサギは、ウサか。結構単純な名前が多いので簡単かも。こうやってみると僕の名前だけ少しキツネから外れているような気もする。でも、外れていないような気もする。よく分からなくなってきたので、一旦考えるのをやめた。
「今日のところは一旦解散だ。明日から細かいことを色々決めてくから準備だけしといてくれ。あと、適当に打ち解けあっといてくれ」
この短い時間で、団長のドラさんが雑な男だということがこの場にいる全員の共通認識として刻み込まれた気がする。難しいパスだなあと思いながら、まわりを見渡すとメンバーも僕と同じ動きをしていた。なんだか面白くて笑いそうになったところを、カババがそれをかき消すように大声で笑った。
「バババ!皆同じ顔してたね。とにかく今日は皆でごはんでも食べようよ」
「そんなんが手っ取り早く仲良うなる方法やな」
カババと同い年のブラカラが、すんなり話を進めていく。すると、キリの長い首がみんなの前に倒れ込んできた。
「僕の部屋デカいんで、どうです?」
「ええやん。テキトーに色んなもん持ってきて食おうや」
キリの意見がブラカラに採用された。ブラカラがこれでええか?という顔をしながら皆を見る。皆、同じようにありがたい感じに頷いた。
「進めてくれる人いると助かるねっ」
隣のウサが小声で僕に話しかけてきた。
「ですね。僕なんか絶対できないんで」
「私も。会話に入るのとか、苦手なんだよね。キンちゃんも苦手?」
突然のキンちゃんという呼び名を無理やり飲み込み、平然とした顔でウサに返事をする。
「僕も一緒です。結構何も考えずに生きてきちゃったので、いざって時動けないです」
ウサが一瞬真剣な顔になったかと思うと、またその顔に戻ってこちらを振り向いた。
「金付きの人ってさ、多分そういう子多いと思うよ。生まれた瞬間から人生が軽く決まってる感じ。抗う作業いらないから、任せ体質になっちゃうんだよきっと。私もそうだし」
「そうかも、ですね」
曖昧な返事をしたところで、キリが部屋への案内を始めた。長い首がルートを示してくれる。とても分かりやすい。呑気に歩いていると、ウサの前にいたニャゴが、いつのまにか僕の隣に来ていた。金の髭がキラキラしていて綺麗だ。
「キン、よろしくニャ」
「あ、よろしくです」
「キンはコンの弟なのかニャ?」
「えっと、コン…?」
「知らないのかニャ?金付きのキツネだニャ。キツネ国の初代金付き、でも数年前に急に姿を消したんニャ。キンは似てる気がしたニャ」
「そんな話、初めて聞きました」
「ニャ!?なんで聞かされてないニャ?まあとにかく違うならいいニャ。よろしくニャ」
「よろしくお願いします」
軽くジャンプをしながら、ニャゴは元の位置に戻っていった。金付きのコン。そう言われれば、話を聞いたような気もするがしっかり思い出せない。まあ先輩ってことだし、名前くらいは覚えておこう。コン。うん、キツネらしいいい名前だ。キンより、良い。
「着きました!長細いでしょ?」
キリの言葉通りの長細い家が、
目の前にすっと、現れた。
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