1498人が本棚に入れています
本棚に追加
「ずっと俺のことが好きだったって」
だから何?そう思いながら頭が瞬間冷却されていき、心が寒々とするのを全身で感じる。8月に聞けば瞬間沸騰していたのだろうか?とにかくはっきりとさせたいのは…
「佐藤さんと付き合っていたの?」
「…ごめん」
「その納涼会から、この12月初めまで二股ってこと?」
「ごめん」
「子ども…出来て良かったわね」
私がそう言うと彼、太一は怪訝そうに私を見る。
「何それ…未唯の‘良かったわね’の意味がわからない」
「わからなくて結構。私も太一の気持ちがわからないから」
「気持ちって…迷うとか揺らぐとか…そういう気持ちだったよ」
「だったら一人でじっくり考えれば良かったんじゃないの?二人を抱くようなことせずに…」
そう言いながら今さらの‘タラレバ’は意味のないことだとため息が出る。
「感じ悪いため息だな」
それを聞いて面倒くさいと強く感じ‘もう男イラナイ’という横断幕が頭の中に張られた。
「太一くん、そんなこと言っちゃダメだよ。悪いのは森下さんじゃなく私だもん」
出た…ドラマのシナリオ通りじゃないか…すごい…どこから現れた?ピンクのコート姿の佐藤さんも太一と同じくうちの取引先会社の社員なので面識はある。いつも可愛い感じのメイクと服装で声のトーンまで‘女の子’という感じの甘さ溢れる人だ。
最初のコメントを投稿しよう!