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王宮の門はティムの屋敷と大きくは変わらなかったけれど、そこから建物までが僅かに丘のようになっていた。
「ロスビエ…待って。上り坂の練習をしていないから一緒に歩こうね」
と私がロスビエから降りようとすると
「ミィ、そのまま私について来い」
ティムが私を振り向いて言う。
「このままだって…ロスビエ、ゆっくりでいいよ。お願いします」
ロスビエの首をとんとんと叩いてお願いすると、ロスビエは軽い足取りで、前で私達を待つティム達を追い抜いた。
「ふふっ…一番乗りだね、ロスビエ」
…ぇっと…ロスビエに連れられる形で建物の前まで来たけれど、4人の待ち構えた人たちの驚き顔と対面してしまう。
「はじめまして…ミィと申します。すみません…高いところから…」
戸惑いながらも会釈する人たちから、気まずい思いで視線を逸らして後ろを見ると、ティムとニルが二人並んで到着した。
「失敗しちゃった…」
キダラから降りてすぐに私の側に来たティムに言うと
「ロスビエの気分だろう。ん」
私に腕を伸ばしてロスビエから下ろしてくれた。
「ありがとう、ロスビエ。お疲れさま」
「キダラ、ありがとう」
「ハインド、ありがとう」
3頭の顔を撫でてからニルの運んでくれた花束を受け取った。そして4人のうち2人に先導されて王宮を進みながら、肩章のタッセルを指先で整え、隣のティムの肩章も見る。大丈夫だと確かめていると、ティムは私の肩を抱きしめ
「愛してる、ミィ」
私の耳たぶに唇を触れさせながら囁く。へっ…今?一人で照れて顔が火照ったよ、と思ったとき、前の2人が両開きのドアを開け、その先にはサラトガーナの王と王妃が真っ直ぐにこちらを見て座っておられた。
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