普通な高校生活を送りたいのです

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普通な高校生活を送りたいのです

「よしっ」  服装よし!  髪型よし!  姿見の前で念入りに上から下までチェックする。  肩より少し長めの髪は梳かすだけで変にアレンジはしない。  服装も生徒手帳に書かれた通りに。  スカートはひざ下5センチ。  これはもう5回も定規を当てたから完璧だ。  ブラウスのボタンもちゃんと上まで閉めて、リボンも曲がっていないのを何度もチェック済みだ。  紺色のブレザーも何度もエチケットブラシでホコリを取ったから大丈夫だろう。  わたし、花岡千景。  本日より高校1年生。  今日は記念すべき入学式。  普通な高校生活を夢見て、目立たず静かに高校生活を送るのだ。  それにはまず第一印象!  最初が肝心。  目指せ普通な女子高生。  目標としては100人とすれ違って100人に素通りされる姿。  うん、これだな。  容姿は地味で普通なのだから規定通りの制服を着ているだけで達成できるはずだ。  もう一度姿見を見てからわたしはふっと学習机に向き直る。  机の上に置いてあるのは木のフレームに入った一つの写真。  わたしのお守りでもあり、相談相手でもある。  写っているのは5歳のわたしと、輝く金色の髪と薄い色素の瞳をもつ飛び切りの美少女だ。 「マミちゃん、行ってくるね」  そう声をかけてわたしは部屋から出た。
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