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「えっと、改めまして。おれは7組の渡凛太郎」
「花岡千景です」
わたしは今とあるカフェにいる。
目の前には間宮くんと、さきほど自己紹介された渡くん。
間宮くんとは家が近所の幼馴染だそうだ。
このカフェも実は渡くんのご両親が営んでいるお店で、今日は定休日で貸し切り状態にしてくれている。
そして朝の騒ぎを鎮めたのはこの渡くんと先生だったりする。
あのやり取りのすぐ後に鳴った予鈴に先生から校舎内へ早く入るよう指導が入り、当の間宮くんは近くにいた渡くんに連れ去られていった。
近くにいたならもっと早くに止めて欲しかったとは思ったが、空気を読んで言ってはいない。
その後、調子が悪いということで間宮くんは帰宅したと伝えられ、このカフェの地図が書かれた紙を渡されわたしは今ここにいるのだ。
ちなみに今日の授業はロングホームルームのみだったので時刻はまだお昼前。
わたしは目の前に置かれた紅茶の入ったティーカップを持って一口飲んだ。
温かさが身に染みる。
そっとソーサーにティーカップを置いてから目の前の間宮くんを見る。
「朝のあれは幻聴ということでいいですか?」
「なんでだよっ」
まずは幻聴説。
だが、やはり幻聴にはできなかったか・・・。
とりあえずなかったことにしようとしたわたしの思惑は外れた。
ややかぶせ気味に間宮くんが思いっきりこちらを見ながら全力で否定してきた。
「幻聴じゃない。おれは千景が好きだ」
「誰かと間違われてませんか?」
では別人説はどうだろう。
「目の前のお前が好きなんだ」
ダメか・・・。
「何か催眠術とかそういたものにかけられたり・・・」
「ぶはっ!」
催眠術の線を疑おうとしたところで斜め前の渡くんが噴き出した。
「おれは催眠術にもかかってない。・・・凛太郎笑いすぎだ!」
肩を震わせながら声を押し殺して笑う渡くん。
「だって・・・っ!花岡さん、おもしろ・・・ぶふっ」
なぜだ。
こっちは真剣なのに。
ロングホームルームの間に一生懸命考えた複数の仮説は笑いとともに消えた・・・。
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