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「わたしとは初対面じゃないの?何か事情があるの?」
気を取り直して間宮くんに質問をぶつけてみる。
仮説が消えた以上、朝考えてきた事情を聴くという計画を実践することにしたわたし。
最重要事項のこっそりとだが、見物人は渡くんだけだから達成しているだろう。
今日は朝から授業が終わるまでの数時間、すでにいろんな視線を浴びてきた。
今朝のあの一件でわたしはもう学校イチ目立ってしまったといっても過言ではない。
公 開告白などこれ以上ないくらいの目立ちっぷりだ。
わたしのささやかな願いが音を立てて崩れていったと感じたわたしは落ち込みもした。
だが、人間あそこまで非現実的な目立ち方をしてしまうと逆に開き直りもするのだと思った。
そういうわけで、わたしは今怖いものなしだ。
そこまでの振り切りっぷりだ。
「おれが初めて千景と会ったのは入試の時だ」
目の前の間宮くんからの言葉にわたしは頭を傾げる。
「入試・・・?」
「おれは過去のトラウマから人と触れ合えない。特に女子とは近づくのも苦手だ。入試のとき、おれは女子に囲まれて気分が悪くなった。中庭で休んでいたら千景がおれに水とタオルを差し出してくれたんだ」
「トラウマ・・・。水とタオル・・・」
トラウマという言葉が気にはなったが、それは個人情報でもあるし聞かれたくない過去もあるだろうということでスルーをする。
入試か・・・。
わたしは記憶を遡る。
入試の休憩時間、飲み物を買いに外の自販機へ行った。
その帰りに人気のない中庭で気分が悪そうな別の中学生を見かけて、持っていた新しいタオルと買ったばかりの水を手渡しはしたが。
ずっと俯いていたため顔まで覚えていなかった。
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