第3章  通りの影

3/4
前へ
/7ページ
次へ
 俺は「ハッ」とした。電車の中でスマホを無くしていたことを思い出した。それも、今日。あの階段に来る前の電車の中で無くしていた。スリかとも思ったが、ジーンズの反対側のポケットの財布は無事であった。スマホのスリ? そんなことも無くはないだろうが、長財布なのでポケットからはみ出している。狙うならそっちだろ?  ならば、あの影が返しに来たってことか? そうなると、じゃあ、あいつは誰なんだ? 「そうだ、指紋?」 いや、見ても分からないだろう。  警察に持って行ったとしても、スリの被害届も出していないし、どうせ相手の指紋なんてリストにあるとは思えない。  ましてや、この俺が警察を当てにするなんて。   スマホも戻ってきたし、怪我なんてそのうちに治るだろうから今夜のことはもう忘れることにしよう。            
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加