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「そっか。でも、ごめん、私はもう離婚することに決めてるから」
俺と目を合わせずに、答える杏奈。
_____仕方ない、俺のせいだ
「あー、うん、だよな。お金のことなら退院したらまた転職とかも考えてみるから」
もっと稼ぎのいい仕事を探すか、アルバイトもしようかと考える。
「ね、ちょっとだけ圭太といてくれる?もう、目を離さないでね」
「え?あ、もちろん」
何か思い出したのか、杏奈は1人で病室を出て行った。
圭太は紙パックのジュースがうまく飲めず、ストローからこぼしてしまった。
「あー、じゅーしゅ!」
「ほら、これで拭いて」
枕元ににあったタオルを渡す。
小さな手で、こぼれたジュースを一生懸命に拭いている圭太。
_____やれることがまた増えているんだな
それから、家から持ってきたサッカーボールをかかえて、ベッドの俺の元に座った。
サッカーをする約束をしようという圭太と、今度の休みにサッカーをする指切りをしていたら、杏奈がどこからか戻ってきた。
圭太とサッカーの約束をしたと話したら
「私とも約束してほしいことがあるんだけど?」
と言う。
「養育費のことなら、なんとかするし慰謝料も待って貰えば頑張るから」
そこはなんとしても誠意を見せたいと決めている。
「そうじゃなくて、ね……」
バッグから封筒を出し、中の書類を広げてテーブルに置いたそれは、杏奈の分が記入された離婚届だった。
離婚の二文字が一気に現実になり、ぎゅっと胸が苦しい、けれど。
「……ちゃんと書くよ」
「それでね、条件なんだけど」
「……うん」
杏奈はどんな条件を出してくるのだろうか?
圭太の親権や面会や養育費のことだろう。
_____なんとか養育費を払って、圭太の父親としての責任を果たして、ちゃんと会えるようにしたい
それだけは、しっかり言うぞと心に決める。
「離婚しても、今のままで暮らしていいかな?」
「え?」
予想と違う返事に、間が抜けた返事をしてしまった。
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