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男というもの
妻、杏奈の妊娠を知った時は、とんでもなく大きなプレゼントを神様から授かった気がした。
_____俺の遺伝子を持つ子どもが生まれる
結婚すれば、それは大多数の人にもたらさせる幸せの一つかもしれない。
でもいざ、その時が自分自身に訪れると、想像以上にテンションが上がった。
「できたかもしれない」と杏奈に言われた時、産婦人科について行くと言ったのは俺だった。
よくテレビで見るような、妊娠の診断を医師の口から聞きたかったからだ。
よくわからない胎児のエコー写真だったけど、妻のお腹に確かに宿っている命が、とても尊いものとして俺の目に映った。
_____俺の子供!
そう思うだけで、体の奥底から不思議なパワーのようなものが湧いてきた。
家事も育児も、仕事だってこれまで以上にやれる、そんなドーパミンが噴き出してきたようだった。
実際、妊娠がわかったあとすぐに始まった悪阻の時期も、できる限り杏奈のことを手伝った。
慣れなくて時間がかかったけど、ゴミ捨てもトイレ掃除も洗い物もなんとかやれた。
最初はゴミ分別とか洗い物の順番とか細かい注文があったけど、そのうち何も言われなくなった。
_____ま、俺だってやればできるってことだな
そうやって、杏奈のお腹がだんだん大きくなって赤ん坊が動くようになると、お腹越しに話しかけることも忘れなかった。
出産にも立ち会うことができ、2週間と少なかったが育休もとれた。
会社では若い女の子から、褒められた。
「岡崎さんって、育メンですね、素敵な旦那様で、奥様が羨ましいです」
その度に俺はこう答えた。
「君たちもそんな旦那さんを見つけることだね、それが幸せになる秘訣だよ」
と。
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