妻の命日は娘の誕生日

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「先生、帝王切開をしてください。  よろしくお願いします。」 僕は医者に深々と頭を下げてお願いした。 「わかりました。  まずは帝王切開をしてお腹の赤ちゃんの命を確実に助けます。  奥様の命を助けるために、最善を尽くします。」 医者は僕の目をまっすぐに見据えて、力強く言葉をかけてくれた。 医者は早速帝王切開の準備に取り掛かり、理世は手術室に運び込まれた。 手術が始まると僕は手術室前の廊下の長椅子に座って、祈るような思いで手術が終わるのを待ち続けた。 手術は1時間程度で終わったようだけれど、僕にはとても長い時間に感じた。 手術後、まずは手術室から保育器に入った赤ちゃんが出てきて集中治療室に運ばれた。 その後手術室からベットに寝ている理世が出てきたけれど、理世は麻酔で眠っているようで、そのまま眠った状態で集中治療室に運ばれた。 その後、手術室から医者が出てきて、 「帝王切開は無事に終わって、赤ちゃんは無事に産まれました。  奥様の状態も変わりありません。」 と説明してくれた。 さらに医者が、 「奥様は今回の手術で体力が落ちていると思いますので、今晩が山場かと思います。  引き続き全力で治療に当たります。」 と言葉をかけてくれた。
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