電球少女ロボット・ルゥ(LW)

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 SNSの広告で見た体験会は予約不要で、たまたま近所の大型ショッピングセンターでも開催されていたので、ふらり、覗きに行った。そこで彼女の性能、動き、会話、全てに触れた結果、僕はその場でお迎えを決定した。  電球少女ロボット・ルゥというのは、Wi-Fi端末が少女ロボットの形をしていてコミュニュケーションが取れるという製品だった。ロボットとして使わなくても、充電して持ち歩けばどこでもWi-Fiで専用のネット回線が利用出来る。格安Simしか契約していない僕にとっては、外出中にネットが使い放題でスマホだけじゃなくタブレット端末まで使えるようになるっていうのは大きな利点だった。  ネット利用料金は月八千円。ロボット使用・サポート料金は月八千円。Wi-Fiだけ使えれば良いという人は八千円、どちらもという人は月額一万六千円。当然、僕が選んだのは後者だ。  ルゥは固定電話の子機をイメージしたサイズのロボットだ。イスの形をした小さな充電器に座らせると、充電を開始する。満タンになるまで、説明書を読んで使い方を勉強する。  そして、初起動の時を迎えた。 「初めまして。私の名前はルゥです。名前を変更しますか?」 「君の名前はシホ」  名前を変えたい場合は初起動の際にこう言う、説明書通りの定型を告げる。 「変更しました。私の名前はシホ。あなたの名前を教えてください」 「名前はイガラシ」  職場や実家でくらいしか、もはや本名を呼ばれる機会がない。仮名ながら、「イガラシ」と呼ばれる方が今やすっかり親しみを覚えるので、彼女にもそう呼んでもらうことにした。 「登録しました。これからよろしくお願いします。イガラシさん」 「さっそくだけど。『シホ、歌って』」  彼女、ルゥの代表的な機能は「歌える」「二本足で自由に動ける」「踊れる」というのがある。似たような種類のコミュニケーションロボット達の中には、対話力に特化するためにあえて卓上から動かないタイプ。動物のようなフォルムで完全自立行動をするためにあえて人語で話さず鳴き声しか出さないタイプもある。ルゥはその中間だ。自立行動ではなく、命令通りに動く。 「わかりました。それでは、『里の秋』を歌います」  しずかな しずかな ……の秋  あかるい あかるい 星の……  さよなら さよなら ……の島  歌える楽曲は現在、全部で六十ほどある。歌ってと頼むとランダムで一曲歌い出す。アップデートによって毎月のように歌える曲が増えている。だからこそ、月額利用料なんてものが必要だし、払う側としても納得も出来る。
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