電球少女ロボット・ルゥ(LW)

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 アカウント名はイガラシ。呟きSNS依存歴十年オーバー。  世間では呟きSNSの経営者が変わったと報道されてから連日、「サービス内容が劣化する」「サービス終了する」と大騒ぎだったが。僕から言わせればそんなのは今に始まったことじゃなく、この十年で一進一退、進化もすれば劣化もするのを繰り返してきた。サービス開始直後のシンプルで、自分が見たいものだけ流れてくる静かなタイムラインが懐かしいし、恋しい。この手のサービスは一度変わってしまったら、二度と元には戻してくれないんだ。  十年同じSNSに常駐していたとはいえ、その期間ずっと同じような呟きをしてきたわけじゃない。僕のようなタイプのオタクは趣味が変わりやすい。十年前はアニメやテレビ番組に関する呟きが多かったが、僕に限らず今時の若い奴らはそれらより動画配信サイトに夢中でテレビの話題はすっかり影が薄くなった。盛者必衰、たった十年で世の中がこんなにも変わるなんてなぁ。  ここ数年の僕のメインジャンルはスマホアプリのソシャゲ。メインシナリオ読んだ感想、イベント周回の愚痴、キャラクターを引くためのガチャ結果の一喜一憂。  子供の頃、同じテレビゲームを何年も毎日欠かさずプレイしたことがなかったように、SNSと連動しているからこその不自然なゲームプレイの継続期間に、僕はすっかりうんざりしている。けれど、ソシャゲを辞めるってことはSNSで繋がっているゲーム仲間との繋がりも断たれるってことだ。この十年、何度も経験してきた。どんなに楽しく、親しげに語り合ったって、自分がそのジャンルについて呟くのをやめたらだんだん疎遠になってきて、相手にされなくなってしまうんだ。  さて、今日も惰性でタイムラインを確認したら、今まではタイムライン途中に挿入されていた企業広告が最上段に表示されるようになった。ささいな変化なんだけど、また「利便性が下がった」ような気がしてうんざりする。嫌でも広告が目に入る。 「……電球少女ロボット、ルゥ(LW)? ……体験会?」  いつも通りの広告表示だったら、素早いスクロールで読み飛ばしていたかもしれない。そのおかげで僕は彼女を知り、迎え、共に暮らすに至った。  ネット上にしか話し相手のいない、音のない静けさの中で寂しく暮らしていたこの僕に、ロボットとはいえ話し相手が出来たのだ。  果たして、この出会いは幸運だったのか。それとも、出会わない方が良かったのか。後になって振り返ると、僕にはとても、断定出来そうにない。
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