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目を開ければ、真っ先に青い海が目に飛び込んできた。数メートル先には赤いポストが静かに佇んでいて、何だか既視感のあるその光景にしばらくの間立ち尽くし、あっ、と去年の誕生日を思い出す。
またこの夢だ。どこまで続いているのかわからないくらい広い海と、空に浮かぶ月、赤いポスト。
この海上を歩くことができると私は知っている。一歩一歩慎重に足を踏み出し、ポストの前に辿り着くとカチャンと音がして、今回はゆっくりと白い封筒が出てきた。私を急かすように出てきた去年とは正反対だ。封を切って、そっと中身を取り出す。
――中学校の制服、よく似合っているよ。お誕生日おめでとう。
丸っこい字でそう書かれていた。去年より少し文字数が多い。
送り主は私が中学校に上がったことを知っているようだ。どうしてなのかはわからないけれど、祝われることに対して悪い気はしない。それに所詮、夢の中の出来事だ。
読み終えて二つ折りに畳む。すると手紙が光を放って、端から光の粒子となって消え始めた。キラキラした輝きが私の全身をあっという間に包み込み、ぱっと光の強さが増して、あまりの眩しさに目を瞑った。
再び目を開いた時、そこには見慣れた白い天井があった。
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