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次の年も、さらにその次の年も。誕生日になると私は決まってあの夢を見て、ポストから出てくる不思議な手紙を受け取った。そうして夢を見る中で、わかったことが二つある。
一つ目は、私がポストに近づけば手紙が出てくるという事。三通目の手紙の時に試したことだが、目を開けた後、自分が最初に立っていた場所から動かなければ手紙は出てこなかった。
投函口に手を伸ばさなくても、近づいてしばらく待っていたら勝手に手紙が出てきたので、『一定の距離近づく』という事が手紙の出てくる条件だと思う。
二つ目は、手紙を読むと夢から覚めるという事。これも三通目の時に試したことだが、封を切って便箋を取り出しただけだと夢から覚めることはなく、二通目の時のように光の粒子になることもなかった。
読むという行為が夢から覚めるきっかけになるようだ。
三通目と四通目、毎年送られてくる不思議な手紙には、やっぱり私を祝う言葉が綴られていた。
――中学校二年生になったね。テストも近いから、勉強も頑張ろうね。お誕生日おめでとう。
――ついに受験生だね。志望校はどこかな?不安になる事もあるかもしれないけど、天音なら大丈夫。自分の思うようにやってごらん。お誕生日おめでとう。
夢の中の出来事というだけで手紙に対する恐怖心は格段に薄くなり、私はすんなりと差出人不明のお祝いメッセージを受け取ることができていた。祝ってもらえるというのはやっぱり嬉しいことなのだ。
あとはこの空間のおかげだろう。海面を照らすのは月光だがその光は太陽のようにあたたかく、海も荒れることなく穏やかだ。波ひとつ立たない水面に唯一波紋を広げられるのは私の足だけで、その特別感に胸が躍った。
風景のあたたかさのおかげで、この夢を怖いと思ったことはない。
手紙の内容は私の近況を綴っていて、文の最後はいつも「お誕生日おめでとう」で締めくくられている。手紙とは書き手の心を伝える手段だ。癖はあるものの、丁寧に書かれた手紙には一文字一文字に心がこもっている。ぬくもりを感じる文章に、読んだ後はいつもぽかぽかと胸の奥があたたまった。
誕生日という特別な一日をさらにわくわくする日にしてくれるこの手紙が、いつしかとても好きになっていた。
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