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八月、制服を身に付け花束を抱えた私は姉の墓を訪れていた。近くの木から聞こえる蝉の鳴き声が私の鼓膜をガンガン揺らす。吹き出した汗をハンカチで拭った。やっぱり制服は暑いけれど、十分に着ることのできなかった姉の代わりに私が着ようと思ったのだ。
初めて見る姉の墓は綺麗に磨き上げられていた。
小山海月
刻まれた姉の名に、口の端を僅かに上げる。今にしてみれば姉はずっと私にヒントをくれていた。
海と月に囲まれた空間。
私のプレゼントした便箋。
あとはクラゲのイラスト。クラゲは海に月と書いて海月と読む。
抱えていた花束を供えて、かばんに入れていた白い封筒を取り出す。近所を走り回り、苦労して探したクラゲの便箋が中には入っている。
花束の横にそっと置いた。
「海月お姉ちゃん――お誕生日おめでとう」
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