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「子供を1人保護した。これから戻る」
『了解しました!受け入れ体制を整えておきます』
「ああ、よろしく頼む。
あ、そうだ。帰ったら飯でも行こうぜ~」
『ふふっ、紫夕さんったら!
無事のご帰還お待ちしております』
「おうっ、サンキュ」
……軽く流されたか。
通信がプツリと切れて心の中で小さく舌打ちをしたが、別にたいして気にしてはいなかった。
守護神の隊員の中で最高位である自分は、正直女性に不自由はした事がない。
こちらが声を掛けずとも自然と寄ってくるし、たいして相手もしてやれないからその時だけ……。一晩だけの相手が居れば、それでいいのだ。
この時の俺は知らなかった。
そんな自分が、一生傍に置いておきたいと思う程、誰かを愛するようになるなんて……。
そしてその相手が、この時拾ったこのクソガキだと言う事も、…………。
「……さて、一緒に帰るぞ」
そう声を掛けたが、少年は動こうとしない。
この足じゃ仕方ねぇか。
男相手に姫抱っこする趣味はないんだが、今回は特別だ。
俺は少年の背中と膝裏に手を回すと、ひょいっと抱き上げる。
想像していたよりもずっと軽い身体。自分が鍛えているせいもあるだろうが、それはまさに「お前羽根が生えてるんじゃないか?」と問いただしたくなる程だった。
しかし、その言葉より先に俺の口から出たのは……。
「っ、……お前、クセェな」
この世界で水は貴重だ。
ましてやこんな貧相な村じゃ、毎日風呂に入れないのは仕方のない事。だが、それにしても……。
何だ?この臭い……。
汗臭い、とは違う。
悪臭というか、異臭というか。
でも、決して嗅いだ事がない臭いではない。我慢出来ない程ではないが、密着している分余計に臭う。
一刻も早く少年を自分から離したかった俺は、早足で待たせてある車へと戻った。
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