序章(2)紫夕side

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「子供を1人保護した。これから戻る」 『了解しました!受け入れ体制を整えておきます』 「ああ、よろしく頼む。 あ、そうだ。帰ったら飯でも行こうぜ~」 『ふふっ、紫夕(しゆう)さんったら! 無事のご帰還お待ちしております』 「おうっ、サンキュ」 ……軽く流されたか。 通信がプツリと切れて心の中で小さく舌打ちをしたが、別にたいして気にしてはいなかった。 守護神(ガーディアン)の隊員の中で最高位(トップ)である自分は、正直女性に不自由はした事がない。 こちらが声を掛けずとも自然と寄ってくるし、たいして相手もしてやれないからその時だけ……。一晩だけの相手が居れば、それでいいのだ。 この時の俺は知らなかった。 そんな自分が、一生傍に置いておきたいと思う程、誰かを愛するようになるなんて……。 そしてその相手が、この時拾ったこのクソガキだと言う事も、…………。 「……さて、一緒に帰るぞ」 そう声を掛けたが、少年は動こうとしない。 この足じゃ仕方ねぇか。 男相手に姫抱っこする趣味はないんだが、今回は特別だ。 俺は少年の背中と膝裏に手を回すと、ひょいっと抱き上げる。 想像していたよりもずっと軽い身体。自分が鍛えているせいもあるだろうが、それはまさに「お前羽根が生えてるんじゃないか?」と問いただしたくなる程だった。 しかし、その言葉より先に俺の口から出たのは……。 「っ、……お前、クセェな」 この世界で水は貴重だ。 ましてやこんな貧相な村じゃ、毎日風呂に入れないのは仕方のない事。だが、それにしても……。 何だ?この臭い……。 汗臭い、とは違う。 悪臭というか、異臭というか。 でも、決して嗅いだ事がない臭いではない。我慢出来ない程ではないが、密着している分余計に臭う。 一刻も早く少年を自分から離したかった俺は、早足で待たせてある車へと戻った。
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