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「ごめんね。手当てをしたいから服を脱がせてもいいかしら?」
「……」
マリィの問い掛けに、少年は答えない。
俺はもう流石に少し呆れていて、少年のそんな反応に無関心だった。
……けど。
俺はこの後、この少年がこんな風になった本当の理由を知るのだ。
「……っ!
君、これって……もしかしてっ……」
突然、少年を診ていたマリィが驚きの声を上げた。
いつもどんな怪我も冷静に「ほらほらぁ~痛くないでしょ~?」なんて常に自分を崩さず処置するマリィが、それはとても珍しい反応。
「?……どうした?」
「!っ……何でもないわ!
紫夕ちゃんはあっち向いてて!」
違和感のある反応に俺が思わず座席から立ち上がって寄ろうとすると、マリィは慌てて少年の身体を大きめのタオルで覆った。
……。
だが。その一瞬で、俺には見えてしまった。
けれど、まさか、と思った。
信じられなかった光景に、俺はマリィを押し退け少年に近付くと、身体を覆っているタオルを退けてもう一度しっかり見た。
「っ、……お、まえ…………」
衝撃が、走るーー。
少年の身体には、今日キマイラにつけられた傷以外にも、いくつもの傷や痣があった。
それは古いもの、新しいもの……。タバコを押し付けられたような火傷や鞭や角材などで打たれた痕、殴られて蹴られたらしき痣だった。
服で隠れていた首から下、身体中傷で埋め尽くされていると言っても過言ではない程に、酷いものだった。
更に、酷かったのは……。
「それ、っ……どう……ッ……」
とても、「それどうした?」何て聞けなくて……。俺は言葉が出て来なくなった。
少年の身体に浮かび上がっている、幾つもの生々しい赤い痕。それは、身体の関係を持った事がある者ならばすぐにピンッとくるもの。
間違いなく、強く唇で吸い付かれてつく痕だった。
それだけじゃない。肩や腕、胸辺りにくっきりと浮かんだ歯形。
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