序章(1)紫夕side

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序章(1)紫夕side

燃え盛る炎の中で、また一つの村が滅んで行くーー。 破壊された家、荒らされた田畑。切り裂かれ、食いちぎられた人々の亡骸。 この光景を、もう何度見て来ただろうか? この光景を見ない為に剣を振り続けて、気付けば何十年と時が経っていた。 次の任務で最後。 この任務で最後……。 そう思い続けても終わらない。 何がキッカケかなんて分からない。 俺が生まれて、物心ついた時から、この世界には魔物と言う恐ろしい怪物が居る世界だった。 怖がっていても何も変わらない。目を逸らしても、逃げる事なんて出来ない。 ()るか、それとも()られるかーー。 その二つしかない選択肢を迫られて、俺は剣を握る事(この道)を選んだ。 この世界を救う為に、魔物から人々を救う為に国が創った特殊機関ー守護神(ガーディアン)ー。 元々は親父が隊員だった事から、俺も幼い頃から様々な訓練を受け、この世界で生き延びる知識と(すべ)を身に付けてきた。 そして、15歳で戦場に出てからもう十五年近くになる。 一向に変わらない世界。 これまでに斬った魔物の数なんて、もう分からねぇし、数える気も失せた。 けど、その中で僅かながら自分が戦う事で救える命があったから……。続けてこられた。 でも……。 『紫夕(しゆう)さん、状況は如何(いかが)ですか?』 耳に付けている小型通信機から聞こえて来た、オペレーターの声。 戦場に向かう時は常に通信機(これ)を着ける事が義務とされており、本部からの様々な命令や情報。またこちらからは現場での状況などを伝達し合う。 「ふぅっ」と溜め息を吐いて、自分の武器である大剣を肩に預けながら俺は答えた。 「最悪だ。ひと足、遅かったみてぇだ……」 村が襲われている、と本部に連絡が入って急いで駆け付けた。 が、すでに惨劇が繰り広げられた後だったようだ。
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