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「まさか、誰か生き残りがいるのか……!」
先程村の様子を見て回った時には何の応答も、助けを求める声などは一切聞こえなかった。
でも、もしかしたらーー……。
そう思ったら、俺はキマイラの鳴き声の方へ迷いも無く駆け出していた。
この手で救える命があるなら、一つでも多く救いたいーー。
そう思って、守護神になろうと決めた。目の前で護れず消えていく命を見るのは、もう沢山だった。
同志には魔器を手にする事が出来ずに命を落とした者も、共に戦場を駆けて命を落とす者も居た。
その者達の無念を報いる為にも、俺は今自分が出来る事を精一杯やってみせるーー。
それが、今まで生き残った自分に託された使命。
人生は一期一会だ。
今を、決して後悔してはならないーー。
走る足を止めないまま、目の前を塞ぐ火の壁を大剣を振って斬り払う。
俺の魔器である、大剣ー斬月ー。手にした当初はその重さと160cm程ある刀身の長さに両手でなくてはとても扱う事が出来なかったが、コイツを相棒にして戦を繰り返した年月は決して無駄ではない。今ではすっかり身体の一部のようになり、片手でも軽々と振るえる。
見えたーー!!
斬り裂いた炎と煙が晴れ、ハッキリした視野に映るのはやはりキマイラ。
幸い、報告を受けている最大級の大きさ程ではなく中型の部類。だが、それでも危険度は侮れない。
この村にあったであろう一軒家程ある体長に、その身体を支える太い腕、更にその先にある鋭い爪。一振りされれば、人の首など簡単に刎ねられてしまうだろう。
そんなキマイラの視線の先に居たのは子供だった。遠目からでは性別までは分からなかったが、白髪の子供。
「!っ……おいっ、クソガキッ!!逃げろーーーッ!!!!!」
俺は子供に叫び、斬月をすぐに振れるよう構えたまま走る。
しかし、子供はその場から動かない。この状況では仕方ないが、足が竦んでしまっているのだろうか?
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