魔眼の毒蛇

4/8
前へ
/23ページ
次へ
「とにかく! 俺は死なねーから安心してくれよな!」  そんな蛇の心中を察することもなく、人間は自信満々に胸を張り言う。 「……まあいい。私はもう少し寝る」 「ん、おやすみ。起きたらまた話そうぜ」  短く言った蛇に、人間はそう言って無邪気な笑みを見せた。  人間の言葉には何も返さず、蛇は小さくため息をつき目を閉じる。  毒に侵された相手に「またの機会」などない。そんなものは当たり前のことで、今さら悲しむようなものではない。  しかし、だからといって生命の死が平気なわけでもない。 (あとで墓でも作ってやるか)  なるべく人間の苦しむ声を聞かないよう、蛇は自らの体に頭を埋めた。  ……が、当然眠れるわけがない。  さっきまで寝ていたからではなく、さっきまで話していた人間のことが気がかりだったからだ。 (移動しておくべきだったな……)  まだ苦しむ声やもがく音は聞こえないが、気配は動かずそこにある。人間にしては長く保っている方ではあるが…… (……いや、さすがに長くないか?)  経験と食い違う状況に違和感を覚え始めた蛇は、そっと盗み見るように目を開けた。 「お、やっぱり寝るってのはウソだったんだな」  目の前には先ほどの人間の顔があった。  ばっちりと目が合い、その空色の瞳に蛇の顔が映り込む。 (しまった――!) 「あっ、大丈夫大丈夫。平気よ平気」  反射的に目を逸らした蛇に人間はそう言い、ニカッと歯を見せた。 「だから言っただろ? 俺は死なねーんだって」  まるでショーを披露するかのように人間は両手を広げる。 「これでようやく信じてくれるか?」  信じるも何も、この人間の不死性は目の前でハッキリと証明されてしまった。 「……疑って悪かった。今まで私に関わって死なぬ者などいなかったものでな」 「まー、そりゃそうだよな」  言葉通り申し訳なさそうに言う蛇に、相手は困ったように笑いながら同意する。 「俺は気にしてないから、悪いなんて思わないでくれよ」 「それは助かる」  相手の気遣いに感謝を述べ、蛇は改めて目の前の人間らしき者へと向き直り問うた。  
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加