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「とにかく! 俺は死なねーから安心してくれよな!」
そんな蛇の心中を察することもなく、人間は自信満々に胸を張り言う。
「……まあいい。私はもう少し寝る」
「ん、おやすみ。起きたらまた話そうぜ」
短く言った蛇に、人間はそう言って無邪気な笑みを見せた。
人間の言葉には何も返さず、蛇は小さくため息をつき目を閉じる。
毒に侵された相手に「またの機会」などない。そんなものは当たり前のことで、今さら悲しむようなものではない。
しかし、だからといって生命の死が平気なわけでもない。
(あとで墓でも作ってやるか)
なるべく人間の苦しむ声を聞かないよう、蛇は自らの体に頭を埋めた。
……が、当然眠れるわけがない。
さっきまで寝ていたからではなく、さっきまで話していた人間のことが気がかりだったからだ。
(移動しておくべきだったな……)
まだ苦しむ声やもがく音は聞こえないが、気配は動かずそこにある。人間にしては長く保っている方ではあるが……
(……いや、さすがに長くないか?)
経験と食い違う状況に違和感を覚え始めた蛇は、そっと盗み見るように目を開けた。
「お、やっぱり寝るってのはウソだったんだな」
目の前には先ほどの人間の顔があった。
ばっちりと目が合い、その空色の瞳に蛇の顔が映り込む。
(しまった――!)
「あっ、大丈夫大丈夫。平気よ平気」
反射的に目を逸らした蛇に人間はそう言い、ニカッと歯を見せた。
「だから言っただろ? 俺は死なねーんだって」
まるでショーを披露するかのように人間は両手を広げる。
「これでようやく信じてくれるか?」
信じるも何も、この人間の不死性は目の前でハッキリと証明されてしまった。
「……疑って悪かった。今まで私に関わって死なぬ者などいなかったものでな」
「まー、そりゃそうだよな」
言葉通り申し訳なさそうに言う蛇に、相手は困ったように笑いながら同意する。
「俺は気にしてないから、悪いなんて思わないでくれよ」
「それは助かる」
相手の気遣いに感謝を述べ、蛇は改めて目の前の人間らしき者へと向き直り問うた。
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