魔眼の毒蛇

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「……それで、お前はいったい何者だ? 人間のように見えるが、人間ではないのだろう?」 「俺はアンデッドだよ」 「私の毒はアンデッドさえも殺す代物だぞ。お前がただのアンデッドであるはずがない」 「マジか。バズの毒ってとんでもねーな」  蛇の言葉に相手は笑みを引きつらせる。 「えーっと……」  そのままキョロキョロと目を泳がせたのちに、相手は観念したようにため息をつき言った。 「……ごめん、騙すつもりはなかったんだよ。いちいち説明するのも面倒くさいから、今まではアンデッドって名乗ってたんだ。大半の人はそれで納得してくれるしな」 「なるほど」 「俺は元人間で魔剣の……まあ、実体のある亡霊みたいなもんだよ」  ――元人間の魔剣。  それは蛇でも知っている人間の伝承だった。 「……魔人ゼアロクルス、か?」 「あー、そうそう。確かそんな感じの名前だったっけな。長いし適当にゼアルでいいよ」  蛇の口からこぼれた名に、相手――ゼアルは影のある笑みを浮かべる。  ゼアロクルス。それは一夜にして村民もろとも村を消した魔術師の名だ。  伝承では破壊の限りを尽くした魔人は大賢者ミゲルによって一振りの剣に封じられ、かつて村があった地に建てられた慰霊殿に安置されているという話だが…… 「実際の俺はちょっと魔力が強いだけの、ただの人間だったんだけどな。たった一晩で悪役にされて、いつの間にか魔人だなんて呼ばれてた」  言いながらゼアルは寂しそうに目を伏せ、それからため息をついた。 「本当、あの大賢者サマは真正の大悪党だよ。村人殺しの罪を全部俺にかぶせて、俺を剣に閉じ込めて、自分は堂々と英雄ぶりやがって……」  その言葉には先ほどまでの明るさなどなく、ドロドロとした憎悪だけが絡みついている。 「――って、ごめんごめん! バズにこんなこと言っても仕方ないよな!」  それもすぐに消え、ゼアルは困ったような表情で笑みを作った。 「そういうわけで、今の俺は死者でも生者でもない『不壊の魔剣』だから、バズに殺されることも壊されることもないよ」 「……そうか」  安心してくれと言わんばかりに笑うゼアルに、蛇は何とも言えない表情を浮かべる。  
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