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（一）
それはほんの一瞬のことだった。お台場テレットタウンの観覧車のカゴが、ちょうど頂上付近に来たときであった。豊島園子は目の前に、急に加治元の顔が近づいてきたことに気づくと、次の瞬間、彼の唇が自分の唇に触れて、軽く吸われたのだ。
観覧車のカゴの外でゆっくり動く景色の三倍、いや五倍以上のスピードで、園子の心臓は鼓動を始めた。
加治はすぐに顔を離して、窓の外に顔を向けた。
園子はそのままの姿勢で動けなかった。なんと言ってやったらよいかわからなかった。
（続く）
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