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この日、地球へと降下する予定であったポレパキンゲ星人ラテチスニは自らの宇宙船の機能で地球上に多数の熱反応を感知し、降下をキャンセルし、衛星軌道上にて地球の各地にて昇っては沈む太陽を見下ろすのであった。
宇宙ステーションの窓より見る地球は美しい、だが…… 地球の各地より昇っては沈む太陽が見える度にその美しさは茶色く煤けたものとなり消えていく。
地上の宇宙局に連絡を行っても通信は途絶。もう、存在しないことは明白であった。つまり、宇宙局から打ち上げられる空気はもう届かないのだ……
宇宙ステーションに設置された酸素発生装置もいつかは壊れる。
皆、地球への帰還を望むが帰還モジュールは宇宙飛行士全員分はない。席の奪い合いになるも、誰が言い出したか「もう、地球には俺達を待つものはいない」の言葉で一気に鎮静化。更なる絶望へと追い込まれるのであった。
ラテチスニも「一緒に降りましょう」と提案したのだが、宇宙飛行士達は今の地球に降りても意味がないとし、空気が尽きるまで宇宙ステーションと運命を共にすると覚悟を決めていた故に拒否をするのであった。
ラテチスニは単独で地球へと降下した。そこにあるのは荒涼とした無機の世界だった。草木の一本も生えず、生物の一匹もいない。その光景を見て呟いた。
「一日でこうなるなんて…… この星の人間にとっては嘸かし『特別な一日』だっただろう。悪い意味で……」
この地球には、この「特別な一日」以降の一日は存在しない…… 一日と言う概念に縛られ感知する人間はもういないのだから……
おわり
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