αにしてΩたる日

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 更にところ変わって、ここはどこかのカジノ。大晦日からギャンブラー達が勝負をかけていた。その中の一人の男は新年の夜明けを迎える頃にすっかり素寒貧目前。男は最後の大勝負をかけるために選んだのはスロットマシーンだった。カードもダイスも昨日今日と相性が悪い…… ならばスロットだとゲームを切り替えたのだが、無情にもスロットマシーンはMAXBETをどんどん呑み込んでいく。やがて、MAXBETを入れられずに、中央のリールしかBET出来なくなってしまった。これが外れれば、正真正銘の素寒貧! ここで奇跡が起きることなぞあり得ない…… 奇跡が起ころうなら、これこそ漫画だ。 「ええい! ままよ!」 男は素寒貧となり、年始を餅も食べられずに帰る覚悟でスロットレバーを引いた。 1列目 7 2列目 7 3列目 7 7が3つ揃った瞬間にも関わらず、男は冷静だった。これまでに777以上の金をBETしているんだ。今更777が来たところで赤字なんだよ! 元旦が終わる一月一日の午後までカジノに居座るための継続分にしかなりゃしない! 男は舌打ちを放った。 4列目 7 男は思わず前のめりになり、スロットマシーンの4つ揃った7の数字を注視した。その瞬間にスロットマシーンの電飾が輝き出した。これまでに見たことがない輝きである。 大当たりだ! しかし、大晦日からの勝負でのBETと同額にしかならない。プラスマイナスゼロだ。結局、大晦日前の大勝負を挑んだ時の資金がそのまま返ってくるだけか…… これでも十分に嬉しい。これなら子供にお年玉を弾んでやれそうだ。 そんなことを考えていると、5列目が止まった。 5列目 7 その瞬間、スロットマシーンは激しく全身の電飾を光らせた後、フリーズし、そのまま動きを止めるのであった。 「え?」 77777! 大当たりである! その瞬間、カジノのオーナーが現れ男に握手を求めてきた。 「おめでとうございます! JACKPOTで御座います! 昨晩からの皆様の幸運は全て貴方様のものです!」 JACKPOT! つまり、大晦日から元旦までにギャンブラー達が賭けてきたBETが全て男の物になったのである! 「え? まじで?」 「はい! マジで御座います! お客様は本日の当カジノの主役で御座います!」 男はそれを聞いた途端に席から立ち上がり、両腕に拳を作りガッツポーズをしながら立ち上がり、歓喜の雄叫びを上げた。大晦日から勝負を共にしてきたギャンブラー達も男の元へと駆けより、万雷の拍手を送り、次は次と本日の主役の幸運に肖ろうと握手を求めに黒山の人集りを作る。妬みこそあるかもしれないが、それを表面に出すような者はいない! 自分のことかのように祝福するのであった! その後、従業員によりスロットマシーンのチェックが行われた。不正や故障が発覚すればこのJACKPOTは水の泡。男に緊張が走る。男は不正を疑われボディチェックを受け、パス。 故障がないかと従業員はスロットマシーンを開けてのチェックを行い、パス。 オーナーは勝利金額が書かれた巨大な小切手を男に手渡した。 「さぁさ! 本日の主役の写真撮影で御座います! 人生最高の笑顔でお願いします!」 男は巨大な小切手を持ち、77777が揃ったスロットマシーンに前にして人生最高の笑顔を向けた。 「はい! JACKPOT!」 この写真はこのカジノが存在する限り、未来永劫飾られることになる…… 男は別室に案内され、賞金を受け取ることになった。目の前のテーブルに乗せられているのは一生働いてもここまで稼ぐことの出来ない程の札束の山。これが全て自分のものだと言う事実を信じられずにいるのであった。 「流石に、直接お持ち帰りと言う訳にはいきませんので…… 銀行の営業日に振り込みと言う形にさせて頂きますが大丈夫でしょうか」 「あ、はい…… 大丈夫です…… あ…… あの…… いくらか手元に置いておいても?」 「ええ、構いませんよ。札束の数本でもあれば、ご家族様全員で美味しいものでもお召し上がりになられるでしょう。そうだそうだ、御自宅までガードマンの方をお付けいたしますね。それではお手続きの方を」 当選手続きを終えた男はカジノの車に乗り、自宅へと凱旋した。男は車に乗っている間、賞金で何を買おうかという妄想に余念がなかった。これから訪れる浮世離れした贅沢三昧の生活を前に心は有頂天外。まさか、一年の始まりの日がこんなに特別な一日になるとは。 男は今日という特別な一日に人生最大最高の感謝をするのであった。
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