αにしてΩたる日

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 さて、終戦を迎えた「とある国」と、その「隣国」であったが…… 十年間の戦争で得たものは皆無。失ったのは数多くの命と膨大な予算。隣国としてはとある国を侵略することで、勢力拡大…… 敷いては世界征服の(さきがけ)とするつもりであった。  独裁者(アタマ)の死で、この十年を無に帰してはこれまで失った命にすまん! 独裁者の無念の意思(ミーム)は側近に受け継がれていた。本当に宇宙人がいたとか、空気発電機がついに完成したとか、そんな報告を受けたが…… 今の我が国はこちらから戦争を仕掛けておいて、何も得られなかったことで国がガタガタなんだ! 衆愚たる我が国の民までもがこの戦争は無駄だったと宣い出している! 宇宙人だの発電機だのと知ったことではない!  側近の手は「押してはならないボタン」に指が伸びていた。これを押せば隣国(ここではとある国のこと)に反応兵器が撃ち込まれる。このまま戦後処理が行われれば、我が国は間違いなく戦後賠償や各国の制裁の嵐だ。 側近として、あんな血筋だけの独裁者(バカボンボン)についてきたのは酒池肉林の贅沢三昧が出来るからだ! 戦時中だって我々は安全な別荘で酒を飲みながら経過報告を待っていただけだ! 下手をすれば戦争犯罪人扱い! 俺も我が国もこれで破滅だ! ならば、死なば諸共だ! 講和条約なぞ知ったことか! 焦土となれ! ぽちっ 反応兵器のボタンは押されてしまった。とある国には「今日二度目」の夜明けが訪れ、全てを焼き尽くす光と爆風によって吹き飛ばされ焦土と化していく…… その刹那、隣国もとある国の同盟国によって反応兵器の攻撃を受け焦土と化した。 抑止は破られた。世界各国が全てを焼き尽くす爆風によって焦土と化していく…… 特別な一日を謳歌していた者達は全て焼き尽くす光を浴び「僅かな熱さ」を感じた刹那の間に蒸発していくのであった…… 一年は365日、一日は24時間、一時間は60分、一分は60秒…… これが時の概念である。 それは人間が太陽の動きから決めたもので、更には「時計」の発明によって数字と言う形で概念化され、「人間全て」が縛られる呪いとなってしまった。 人間全てが消滅することで、時の概念に縛られる者はいなくなったのである。
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