第1章 泣くのはまだ早い!

3/25
217人が本棚に入れています
本棚に追加
/1148ページ
姉の光莉がとうとう彼氏の咲也くんと入籍して、7月に結婚式を挙げた。サプライズだらけの姉貴たちの結婚で周りは浮かれまくって、飲み会やらパーティーやらで賑わっていたけど、俺はやっぱりそんな時でも心までは浮き足を立てられない。 ここに、もう1人、必要な人がいないから…。 あの人が、そばにいないから…。 * これは姉貴の結婚式より少し前の時期に遡る…。 数年前、俺は3歳年上の最愛の女性、聖香(せいか)と想いが通じ合った。聖香が留学しているドイツにも会いに行って、思いを何度も確かめ合って、俺のために帰国することを決めてくれた矢先、思わぬ妨害があって俺たちは引き離された。 聖香を狙っていたのは、聖香と同じ大学生のレオン。そいつが聖香を奪ったんだ。ただ奪っただけじゃない。聖香の親友のルネーを盾にして誘き出して、家に監禁した。すぐに救出に動いてくれた人がいたけど、2人同時に救出は難しいと言って、聖香はルネーを先に逃して自分がレオンのそばにいることを決意した。レオンは空手の選手で、父親がドイツでトップクラスの大手の弁護士をしていて家柄もなかなか裕福らしい。そういった力も借りて、レオンは俺たちからの救出を追い払い、誘拐や監禁の事実はないと声明文を送ってきた。しまいには、聖香とは婚約しているとまで言い出していた。聖香は、俺たちにも害が降りかかることを恐れて、自分の身を犠牲にしてレオンのそばにいることを選んだんだ。
/1148ページ

最初のコメントを投稿しよう!