第1章 泣くのはまだ早い!

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自分が大人しくここにいて、レオンが望むように結婚に応じれば、ルネーにも俺にも手を出さないと約束したんだろう。 今の俺がこうして好きなことをやれているのも、聖香の犠牲があったからだ。 そんな聖香に一目会いたくて、話がしたくて、俺は数年前にドイツに行って、ほんの3分間だけ話をした。サヨナラを告げられても、受け入れられるワケがない。本心ではないことくらい、分かってる。俺だけじゃない。みんな、分かってるんだよ。 そして。 あれから、約3年。 ここにきて、ようやくチャンスが巡ってきたんだ。 スポーツの世界大会。これは世界各国でも行われるし、期間も長い。全部終わるまで3ヶ月くらいかかる。種別ごとに開催する国も場所もスポンサーも違う。でも、試合は常に地上波テレビか、CS放送、または動画配信サービスでライブ配信される。 その大会の日本武道の空手、柔道、剣道は日本で開催される。その大会に、ドイツ代表でレオンがやってきた。しかも、聖香を連れて…。既婚者、または家族、恋人などは同行できるし、友人や応援団もやってくるから、ホテルや業者も多く受け入れている。そして世界大会ともなれば、知名度のある選手も多いので、警備体制も厳重だ。そんな中、ドイツ代表の空手の選手の1人、レオンだけは先に日本にやってきたという情報が入った。レオンには現在脅迫文も送られてきているから、日本での護衛も強化してほしいとのことだ。 護衛? そんなもの、いらないだろ。
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