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prologue
「や、やめてくれ……。もう略奪行為なんか」
「五月蠅いな。やったことは帳消しできないんだよ。大人しく首を捧げてよ」
逃げる罪人を後ろから拷問の如く体を滅多刺しにする。
刺された直後とてつもない痛みを感じるが、血はおろか傷さえも見当たらない。
刺して、その直後に傷口を治しまた刺す。
そんなことを何回も、何回も繰り返していれば辛いことだろう。
……私から逃げなければ、辛い思いをしなくてよかったのだが。
心からこの罪人を愚かと思いつつ、私は何も能力を付与していない銃を構え、撃ち放った。
地面に血が舞い散る。
さすがにほぼ0距離で撃つと、やはり血飛沫が返って処理が面倒くさい。
「はぁ……。さっさとお縄につけばいいものを」
ただでさえ最近魔獣の出現率が前年の比率をはるかに上回るペースのため忙しいところを、脱走者や免罪人が現れるせいで余計に多忙になる。
そろそろ過労死してもおかしくないレベルの労働なんだがなぁ……。
心の中で悪態をつきつつ私は皇都へ転移する。
……ほんと、数日前までは一般女学生だったんだけどなぁ……。
遡ることほんの数日前。
「それじゃあまた明日ねー!」
ごく普通の日常の風景。高校を卒業するまでは変わらない風景だと、思っていた。
今日は私の祖母の誕生日。母から準備の手伝いを任されてるからちょっとでも早めに帰らないと……。
いつもはあまり使わない裏路地をいくつもくぐり家路をたどる。
それが最悪への一歩だったのだが。
昼間なのにも関わらず日が遮られ薄暗い路地は地面が見渡せるほどの明るさを持っていなかった。
ぐちゃり、とトマトみたいな感触の物を踏み潰す。
「うげ……。最悪。何踏んだの……?」
そう私が足を上げた途端。この場においてはあり得ない明るさが私を照らした。
眩しさに目を伏せる。
次に顔を上げたときには――、
――数百年前の欧米みたいな王城の中だった。
「初めまして。貴女の名前を教えてくれないですか?」
「え、えっと……藤林舞華です」
突然の謎の場所への転移。ほけもんでさえも謎の場所へ行くにはどこかを介していかなきゃならんのに私の場合は何故ここに飛ばされたのだろうか。
正直、わからないことだらけだった。だが、そんな私の心情など相手側は知る素振りなし。
馬鹿げているな。
「マイカさんですね。今はきっとご混乱されているとお思いです……が。率直に申し上げさせてもらいます――
――マイカさん。貴女には【断罪人】、になって頂きたいのです」
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