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Ⅰ ~【断罪人】、誕生~
「……は、えっと?」
想像できるわけはない言葉が放たれてただでさえ止まりかけた私の脳は完全に機能停止しそうになっていた。
「とりあえず、その【断罪人】、だっけ?それはなんなの?」
「簡潔に申し上げますと、死刑執行人です」
言葉の金槌が私の頭を脳天から脊髄まで叩きつける。
ちょっと待て、今とんでもない言葉が聞こえなかったか?
「す、すいません……。もう一回言ってもらえないですか?」
「え?あ、はい。貴女に死刑執行人になって頂きたいと――」
そのセリフを聞き届けることなく、私はまどろみの中へ身を投じた。
光にしがみつき、瞳を朧気に開く。
「あぁー……。気絶したからかな……。何となく心なしか気分が楽に――」
独り言をぼそぼそと呟く私の首の真横にはしっかりと伸ばされた腕。そしてその先にはありきたりな包丁。
「なっ、どうして避けられるんだっ!?」
「かよわい女子をこんな奇襲で命を奪おうとするなんて……。野蛮だねぇ……」
今は亡き父に心の中で三礼三拍一礼しておく。
父が『とりあえず柔道とかの護身術は一通り叩き込んでやる』とガチ目にしごかれたのがここで生きてくるとは。
……まぁ、天国で見てる父もこんなことで使うことになるとは思ってもみなかったろうけれど。
「ともかく、一緒に来てくれる?私を呼び寄せただろう人達の下に投げ込まないと」
「はっ、できるならやってみろっていっだああああああっっ!?!?」
喚き散らかして耳障りだったからとりあえずひじの関節を二つとも同時に本来曲がるべきでない方向へぽきっと曲げる。
……もしかしてこいつ、人間じゃない?
明らかに骨格がおかしい。
外形は人間と大差ないが、明らかに骨が細い。骨粗鬆症で不健康かつカルシウム不足の女性みたいな骨をしている。
もしかしなくとも、この国情勢悪い?
その辺はあの神官みたいな人に聞けばいいか。そう決めて暴れられても面倒なため膝の関節をとりあえず脱臼させる。
奇襲してきたくせにもう気絶していた。やりすぎたかな……。
「な、何事ですかっ!?」
私が部屋を縦横無尽に動き回ったせいか、それともこの男の叫び声か。どちらにせよ何か異質な雰囲気に駆け付けた給仕さん――お姫様くらいに可愛い――によって男は処理された。
その後、可愛い給仕さんとともに先の神官みたいな人の元へ向かった。
話をしっかり聞く前に気を失ったから正直何をするべきだったのとかはわからない。
だからこそ神官に合わないといけなかった。
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